読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

幼女でもできる自作CPUチップ (9) CPUテストチップ製造

電子工作 自作LSI

 前回の記事

ourfool.hatenablog.com

では、CPU製造に先立って、その心臓部であるALUのレイアウトとデータ送付をおこなった。
 そして今回は、ALUの載ったLSI製造について書いていく。よーーーうやく実際のLSIチップの製造である。

 ここでLSIの製造工程について述べておくことにする。LSIの製造工程は大きく二つに分けられる。一つは前工程と呼ばれるウェハ製造プロセスである。半導体ウェハと言われて想像するあのややデカ金属円盤を作るまでがこれにあたる。チップ設計者が送ったデータからマスクパターンを生成し、微細な配線や拡散層のパターンを形成する。トランジスタや配線の大きさは非常に小さく、先端プロセスでは数nmにもなる。これよりも大きなゴミの付着は致命的であるからして、製造はドチャクソ綺麗なクリーンルームでおこなわれる。人間が中で作業する場合には、全身が覆われた怪しげな白装束集団と化すことになる。

f:id:ourfool:20160916191647j:plain

ウェハの写真 (Wikipedia "集積回路"より)

 続いて、後工程というプロセスがおこなわれる。円盤状のウェハに載った大量のチップをそれぞれ四角い形に切り出すダイシング作業や、これをよく見る黒いICパッケージへと封止するためのボンディング作業をそう呼んでいる。前工程のようなクリーンルームでおこなわれる微細加工とは全く異なるスケール感、装置で製造が進むため、明確に区別されている。

f:id:ourfool:20160916191954p:plain

DIPの写真 (Wikipedia "集積回路"より)

 上に示したのは電子工作で使う標準ロジックICなどで見るDIPタイプのパッケージである。あの黒い物体の中に、さらに小さな数mm角のチップが入っており、それが外に出ているリードフレームと細いワイヤを介してつながっている。このワイヤをつなぐ作業がワイヤボンディング*1である。

 パッケージには他にもマジで無限に種類があるが、電子工作レベルでいうと、mbedに乗ってるARMマイコンでよく見るQFPや、ラズパイに乗ってるSoCで見られるBGAなんかがある。intelさんのCPUソケットは最近LGAなんちゃらみたいな名前だが、あれはまんまパッケージがLGA形式だからである。これらは順にピン数が多く、パッケージに必要とされるピン数はざっくり簡単に言うとチップの性能に依っている。

 さて、実際のチップ製造に話を戻すこととする。前回作成したレイアウトデータを工場に送付して数週間後の8月初頭、実際に製造をおこなっていただいた。通常のLSI設計フローではデータ送付の時点でチップ設計者の出番は終了し、あとは野となれ山となれといった感じなのだが、今回は製造工程(上述したところの前工程)を特別に見せていただく機会に恵まれたので、その模様も下に掲載する。

 クリーンルーム内は以下のような雰囲気。パターンの描画やフォトレジストの塗布、洗浄などをおこなう機材が並んでいる。部屋が黄色く見えるがこれには重要な理由がある。というのも、ウェハ表面の金属配線やその他のパターンは、光に反応して溶けるフォトレジストを利用して作っていくので、一般的なライトの下では変質してしまう。そのため短波長をカットした黄色いライトの下で作業をする必要がある。

f:id:ourfool:20160916222607j:plain

 以下はフォトレジストを塗布したり表面を洗浄する装置の動いているようす、ピタゴラっぽいエンタメ感がある。

 

f:id:ourfool:20160916224640j:plain

以上は作成途中のウェハのようす。基本的にはこのシリコンで出来たウェハに対して、
メタルを全面に作る→全面にレジストを塗る→メタルを形成するとこ以外に光を当ててレジストを溶かす→レジスト溶けたところだけメタルを削る→レジストを全部除去する→所望のパターンを持ったメタル層ができる
という流れを繰り返して何層もパターンを作っていく。どうも良い説明になってるのかよくわからんがわかっていただきたい。

 そんなこんなで完成したLSIの写真が以下である。通常のプロセスだと最上層は保護膜で覆われており配線などはあまり見えないのだが、今回のプロセスは保護膜がなくメタルがむき出しになっているため、パターンがはっきり視認できる。

f:id:ourfool:20160916222026j:plain

ALUの顕微鏡写真

 

f:id:ourfool:20160916222015j:plain

ポリシリコンで描いた萌えイラスト

 

 パターン形成後簡単なチェックを施し、後工程を別の工場にておこなっていただいた結果、3mm角のLSIチップが無事完成した。チップ単体の他QFPへ封止したものもいただいた。

 QFPの方は全くもってQFPでしかないのでまあいいとして、実際のシリコンチップについて述べておく。見た目は銀色チックで表面パターンはよく見える。裏側はまっさらでやはり銀色。それと何よりめっちょ小さい。具体的には以下のような感じである。凄くわかりやすくするためねんどろいどと比較した。御覧のとおりちょうどねんどろいどの手の平に乗るくらいしかない。

f:id:ourfool:20160916230252j:plain

f:id:ourfool:20160916230256j:plain

 というわけで今回はLSIチップの製造について書いた。次回はこのチップを実装するための基板設計と実装について書くはずである。書こう。

*1:ワイヤボンディングでない接続方式も特に近年無限に考案されており、チップを逆さにするだの3Dにして複数チップを積層するだの、さらには2.5Dだの、前工程でパッケージングもするだの、要するに色々つよいのが平然と実用化されている。